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日本野鳥の会長崎県支部は、1985年8月の設立です  



 オシドリ調査

オシドリ  Aix galericulata 鴛鴦 Mandarin Duck

オシドリってどんな鳥?
 

A.オシドリは、昭和41年に県民鳥に指定された長崎県のシンボル野鳥です。
 ガンカモ目ガンカモ科で、全長は43〜51cmです。長崎県では秋から冬にかけて見られる鳥です。習性は地上や水面で主として植物質の餌をとり、木にとまることが多く、巣は樹洞に作ります。
 雄は美しい複雑な色彩斑紋をしていて、後頭の羽毛は冠羽状になり、銀杏羽と呼ばれる羽があり、数ある日本の鳥の中でも最も美しい鳥の一種です。


県下一斉オシドリ調査について

 日本野鳥の会長崎県支部では、県民鳥オシドリを県民に広く啓発し、理解していただくとともに、オシドリの生息地分布と生息数及び生息環境等の状況を把握し、自然環境保全に貢献することなどを目的として、1999年から毎年、県下各地で一斉調査を実施しています。
 オシドリは、常緑広葉樹を構成するカシ類(アラカシ・シラカシなど)、シイ類(スダジイ・コジイ) などの実(どんぐり)などを越冬期間中には主食としています。そのような関係で長崎県における越冬地は、アラカシ、 スダジイ、コジイなどの自然林のある環境で、溜池、貯水池、河川、波の静かな入江の海岸など岸辺の水面がカシ類・ シイ類で覆われている場所に生息しています。したがって、「県民鳥オシドリ」を保護するためにはこのような自然 環境の保全が重要です。

      

第1回調査の参加シール(1999年)  第22回調査の参加缶バッチ(2020年)

2025年県下一斉調査結果

2025年1月19日(日)、対馬市を除く県下122ヵ所を会員34名と壱岐自然塾2名の協力を得て調査を実施しました。生息が確認できた場所は、69ヵ所でした。生息数は、雄874羽、雌497羽、未分類1,865羽、総数3,236羽で、2016年以来の3,000羽超えの確認数となりました。生息数が100羽を超えたのは、平戸市・阿奈田ダム1,500羽、佐世保市・江楯池112羽、長崎市・川原大池107羽の3ヵ所で、前年より3ヵ所減となっています。
 地域別では、壱岐市316羽、五島市75羽、平戸市1,507羽、佐世保市619羽、松浦市25羽、北松浦郡7羽、東彼杵郡358羽、西海市21羽、西彼杵郡63羽、大村市5羽、諌早市0羽、長崎市240羽、雲仙市0羽、南島原市0羽となっており、生息数は県北部で多く、県南部では少ないという結果でした。

1999年以降の県下一斉調査の概要

 調査の開始から27年間、会員の地道な活動として継続されていて、貴重な記録が蓄積されてきています。1999年から2025年までの記録を集計しました。
 調査は、毎年1月第2日曜日を基準日として、27年間では1月7日から20日の間で実施されました。
 調査に当たったのは、会員の平均31名(最多41名、最少21名)で、延べ調査参加者数は平均111名でした。参加が少なかった年は、積雪で調査ができなかった所があったことなどです。

年次別生息確認数の推移
   生息確認個体数の推移は、下のグラフで見ることができます。
 

長崎県下におけるオシドリ生息数の推移 

  27年間での年平均個体数は、2,864羽(標準偏差1,225羽)で最多数6,555羽、最少数1,383羽となっており、年較差が大きいことが分かります。

 このうち、雄は平均個体数1,409羽(標準偏差547羽)、雌は平均個体数1,013羽(標準偏差497羽)で、雄雌の割合は雄49.2%、雌35.4%(雌雄の未分類個体15.4%)、雌雄比は雌に対して雄が1.39倍となっています。

 もう一点注目していただきたいのは、2009年から2014年までの間は、それ以前に比べて急激な観察数の減少が見られます。調査地点数は変わらないか、むしろ多くなっていますので、飛来数が減少しているのは確かです。何らかの環境悪化が考えられます。ただし、2016年は3,000羽を超える数を確認しており、2015年から2016年にかけ回復基調かと期待されました。しかし、直近5年間の平均観察数は2,525羽です。2025年の調査では3,236羽でしたが、今後も3000羽レベルを回復していくのか見守っていく必要があります。

生息確認箇所数の推移
 
 27年間での年平均生息確認場所数は、43ヵ所(標準偏差13ヵ所)で最多数69ヵ所、最少数20ヵ所となっています。これまでに生息が確認された箇所は実数で157ヵ所であり、島しょ部を含む県内各地に分布しています。
 比較的に確認数が多い地点は、西海市・雪ノ浦ダム(20回、377羽/回)、松浦市福島町・大岩谷池(10回、356羽/回)、平戸市・阿奈田ダム(6回・379羽/回)、佐世保市・江楯池(26回、332羽/回)、長崎市・川原大池(24回、199羽/回)、長崎市・小ヶ倉ダム(20回、128羽/回)、長崎市・式見ダム(24回、121羽/回)、大村市・野岳湖(18回、109羽/回)、長崎市・西山水源地(21回、87羽/回)、長崎市・本河内水源池(17回、87羽/回)、壱岐市・勝本ダム(12回、88羽/回)、長崎市・黒浜ダム(20回、79羽/回)、諫早市・土師野尾ダム(15回、76羽/回)、壱岐市・当田ダム(12回、78羽/回)、佐世保市・山の田水源地(16回、74羽/回)、五島市・繁敷ダム(21回、78羽/回)、長崎市・浦上水源池(19回、65羽)、東彼杵波佐見町・野々川ダム(21回・63羽)、壱岐市・梅の木ダム(12回、67羽/回)、松浦市福島・深浦の溜池(12回・65羽/回)、東彼杵郡波佐見町・耳取池(22回、51羽/回)、諫早市・境川ダム(20回・49羽)、佐世保市・下ノ原ダム(13回、48羽/回)などとなっています。
 しかし、確認数が多い地点でも、毎年確実に多くのオシドリを観察できるとは限らず、多い年、少ない年と年較差は大きいようです。

 
   

   

長崎県内のおもなオシドリ生息地点


 最 後 に 
  毎年、会員の協力を得て実施してきたオシドリ一斉調査の積み重ねによって、長崎県内のオシドリの生息状況が明らかになってきています。特に、年による個体数の変化や生息箇所の変動は、大きいことが分かりました。気象変動や餌となるカシ類、シイ類、コナラなどの実(どんぐり)などの出来具合、そして、池、ダム、河川などの環境の変化など様々な要因が、影響していると思われます。

一方で、県内の約150箇所以上で生息が確認されており、大切な越冬環境が数多く分布していることも、改めて認識することができました。

 今後とも、オシドリの生息状況がどのように変化していくのか、見守っていく必要があると思います。また、12月に沢山いた場所でも調査時点での1月には、かなり減少していた場所もあるなど、不明な事柄もまだまだあります。オシドリが生息できる環境や生息数の維持のためにも、長崎県支部の活動として、是非、継続し成し遂げていきたい調査活動です。



 


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日本野鳥の会長崎県支部
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