長崎県の空は渡り鳥の十字路
アカハラダカの渡り(南北型)
この型の代表的な渡り鳥は、アカハラダカ、マナヅル、ナベヅルなど。アカハラガカは夏に朝鮮半島や中国などで繁殖し、冬はフィリピンから以南で越冬します。この間の移動の時期に県内各地(県本土、平戸島、五島列島、壱岐島、対馬島)の山の上空を、春は北方へ、秋は南方へ渡ります。
ナベヅルやマナヅルは、夏にシベリア大陸および中国の北東部で繁殖し、冬は鹿児島県の出水平野で越冬しますが、この間を春、秋に往復します。
体長約30cmでキジバトより少し小さいタカです。
繁殖地は朝鮮半島・中国・ロシアの一部で、営巣地は山地・平地の農耕地を包含する森林地帯で、高木の広葉樹や針葉樹に営巣し、深山より農耕地の周辺で多く見られます。
繁殖地ではカエルを主食とし他に昆虫類・淡水魚類・小型のほ乳類・鳥類などを補食しています。
越冬地はフィリピンより以南の東南アジアの各地。
マレーシア・インドネシアなど太平洋地域であることが知られています。
長崎県での渡りの発見は? |
1985年9月29日に佐世保市八天岳上空で旋回している3羽を発見しています。翌年の9月14日に竹上修・谷口秀樹の両氏が諫早市五家原岳山頂で13000羽の渡りを観察、同日に村山和聰氏が西彼県民の森でも約5000羽の渡りを観察しています。
その後、世知原町国見山や佐世保市烏帽子岳でも多数の渡りが観察されるようになりました。
これまでも多数のアカハラダカが渡っていたのに、どうして分からなかったのですか? |
これまでタカ類の渡りは10月のサシバやハチクマ(タカの一種)の調査が中心で、9月に山頂で鳥の調査をすることがありませんでした。
県内でアカハラダカが観察される場所は? |
対馬(内山峠)、平戸市(鯛の鼻447m)、北松浦郡小佐々町(冷水岳302m)・世知原町(国見山777m)、南松浦郡新魚目町(番岳448m)、佐世保市(八天岳707m、烏帽子岳568m、隠居岳670m)、諫早市(五家原岳1058m)、長崎市(唐八景305m)、西彼杵郡(県民の森)をはじめ多良山系などの山頂及び傾斜面の上空を渡るのが観察されます。
烏帽子岳での渡りの状況は? |
(1989〜1991年のデータより)
[1]風向と出現数
烏帽子岳での出現率は北風31%、北西風43%で北寄りの風のとき多い。
[2]風力と出現数
烏帽子岳での風力4のとき出現数が最大であり、風力2〜5のときにほとんどが集中しています。
風力6以上のときはほとんど出現していない。
[3]降水量と出現数
降水量なしのときが74.2%、1〜5mmのときが25%で、それ以上の雨が降るとほとんど出現しない。
前日降水なしの日が61.5%、前日のみ降水ありの日が23.7%、2日降水が連続した日は12.5%で、4日以上降水があった後はほとんど出現しない。
[4]20分毎の出現数
●烏帽子岳では8時・10時・13時ごろにピークがあります。
●冷水岳を通過したものは烏帽子岳を通過しない。
●冷水岳を通過したものは佐世保市の市街地上空を通過か?
●国見山を通過したものは隠居岳は通過するが烏帽子岳は通過しない。
●渡りの速度は40〜45km?
8時に見られるものは烏帽子岳及び北松浦郡周辺で一泊したもの?
10時のものは対馬から、13時のものは韓国南部から飛来?
烏帽子岳ではいつがよく見られますか? |
1000羽以上:9/9〜9/23
2000羽以上:9/9〜9/20
3000羽以上:9/9〜9/16
5000羽以上:9/11〜9/15
7000羽以上:9/12〜9/15
渡りの途中どこで寝ているのですか? |
国見山の一帯・烏帽子岳の一帯・将冠岳の一帯など森林をねぐらとしているのが確認されています。
渡りの途中はなにを食べているのですか? |
烏帽子岳一帯で地面に降りて昆虫を食べているところや、空中でチョウを捕らえたのが目撃されています。
春は西から東へ渡り、秋は東から西へ渡るこの型の渡り鳥には、ハチクマ、ツバメ、コムクドリなどがいます。コムクドリは本州中部以北、ハチクマは本州以北、ツバメは日本各地で繁殖し、秋に越冬地に渡ります。越冬地はいずれも南の方です。ハチクマは県本土北部から五島列島の最西南部の大瀬崎から南西方向への海上を渡ることが明らかになっています。ツバメも県本土北部を渡るものは五島列島へと渡っていきますが、その先はどの方向へ飛んでいくのかは不明な点が多い。
体長約60cm、翼を開いたときの幅約1.3m、トビより少し小さいくらいのタカです。
日本や中国北東部、ロシア南部で繁殖し、東南アジアで越冬します。
日本では主に北海道や本州の低山で繁殖し名前の通り蜂を食べることが知られています。
秋には、各地で南下、西進するハチクマが観察されます。
長崎県内の観察適地は? |
ハチクマは同じ地域で繁殖するサシバとは少し異なるコースを移動することが最近わかってきました。
サシバは伊良湖岬、佐多岬などの太平洋岸沿いに南下しますが、ハチクマは主に中国山地南部、北部九州を西進するコースがメインルートのようです。
長崎県内では、早くから観察されていた北松浦郡小佐々町の冷水岳をはじめとしていくつか紹介します。
・ 冷水岳 (302m)〜北松浦郡小佐々町
・ 国見山 (777m)〜北松浦郡世知原町
・
烏帽子岳(568m)〜佐世保市
・ 志々伎山(248m),安満山(514m),鯛ノ鼻(447m)〜平戸市
・
大瀬崎(大瀬山)(250m)〜南松浦郡玉之浦町
いつごろ渡るの? |
長崎県では9月下旬頃が渡りのピークとなっています。
大瀬崎では、9月25日前後に最大となるようです。だだし、台風や低気圧などの悪天候で後ろにずれることもあります。
どのくらいの数が渡るの? |
大瀬崎では1997年に1万3千羽以上が確認されました。
何時ごろが良く見られるの? |
本土地域では、はっきりとしていません。
これは前日のねぐらと観察地点との距離に関係するからです。
大瀬崎は日本最後の地としてここから東シナ海に飛び立っていくため、飛び立ちは夜明けとともに始まり午前中には終了します。
しかし、午後にも多くが飛来し、翌朝の飛び立ちをひかえてねぐらにつきます。
どんな種類のツルが渡るのですか? |
渡りの際に見られるのはナベヅルとマナヅルです。下から見上げるとバックが明るいためどちらも灰黒色に見えますが、横からや上から見るとナベヅルは黒っぽく、首が白く見えます。一方、マナヅルは白っぽく見えます。マナヅルがずっと大型です。
越冬地と越冬数は? |
鹿児島県出水市の荒崎が越冬地となっており、ツルの保護監視員をされていた又野さんがツルの餌づけに成功し、この地でツルを越冬させるのに大きく貢献されました。多い順にナベヅル、マナヅル、その他約1万羽のツルが越冬し、年々増加の傾向にあります。
ツルはどこから渡って来るのですか? |
中国北東部やシベリアから越冬に来ています。
いつごろ出水を飛び立つのですか? |
出水のツルの北帰行は、たいてい2月12日〜13日に始まり、それは決まってマナヅルからです。そして、4月の上旬にはほとんどのツルが繁殖地へ帰ってしまいます。
飛び立つときの天候は? |
南東の風などのとき多くのツルが飛び立ちます。あまり風が強かったり雨が降ったりすると渡りの途中でも出水へ引き返すことがわかっています。これを逆行の渡りといっています。
出水を飛び立つときの時刻は? |
9:00〜10:00のことが多いのですが、3月下旬になると出発時刻が早くなります。
渡りの時の高さは? |
海上、陸上とも100〜200メートルのことが多いようですが、晴れて空気が澄み渡り見通しがきくときは高く、春霞や、曇り、小雨のときは低く飛ぶようです。
飛翔速度は? |
速度は天候により左右されますが、平均時速は40〜50km/hです。
渡るときの型は? |
普通は、写真のようなカギ型や一直線に並ぶサオ型の編隊飛行をします。よく「クルルークルルー」と鳴き声を出します。
出水を飛び立ったツルのうちどれくらいが長崎県の地上から観察されていますか? |
佐世保での発見率は約50%です。
通過時刻は? |
長崎11:00〜14:00、佐世保13:00〜16:00、平戸14:00〜17:00のことが多いようです。ツルは渡りのときよく「クルルークルルー」と鳴き声を出します。皆さん声が聞こえたら空を見上げて見てください。
カギ型の編隊飛行
どこへ行けばツルの北帰行が見られますか? |
見られる確率の高い場所として、長崎市近郊では野母半島(権現山)、唐八景、稲佐山、県民の森。佐世保市の近郊では西彼青年の家、大島町(百合ヶ岳)、展開峰、石岳展望台、冷水岳展望台。平戸市近郊では川内峠、鯛ノ鼻、生月(オオバエ灯台)などがあります。
マナヅルの家族 | 諫早市小野平野で越冬したナベヅル |